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(昔々の‥)プロレス会場設営のバイト

Takahiko Wada
Takahiko Wada

ハードディスクの整理をしていたら、面白いものが出てきた。
昔、プロレスのウェブサイト作ってて、
そのときに載せてた、プロレス会場設営のバイトの体験記です。

大学のときの話ですね。
なんか拙い文ですが、結構笑えたので、この期に及んで載せてみようと思います。

長文ですが、以下どうぞ。kaijo.jpg

1.序章

大学のアルバイト募集掲示板で私はそのバイトを発見した。迷わず、そのバイトを申し込みまずその担当者に電話した。
私は丁寧に電話にでた、しかし相手の態度の悪いこと!その担当は
タメ口で終始、私の応対をした。
私は思った。ここの社員は柄が悪いぞ。気合い入れて行かねばやられる…と。

2.集合

バイト当日。集合は会場に朝8時。私が8時前にそこに着いたときには既に他のバイトのメンバーが30人ほど集まっていた。
しかしなかなか社員は現れない。どんな柄の悪いやつが現れるかと待ちかまえたいた。
そして、現場責任者は現れた。しかし、その彼は私の想像していた柄の悪いあんちゃんではなく、感じのよい好青年であった。
ちょうど、テレ朝の中丸アナの様な…そんな印象を私は受けた。
私は、ほっとした。

3.会場を作る

まず、会場を作る手順。今回の体育館の場合、まず床に
シートを敷く→ロープを張って中心を割り出しそれに従い椅子を並べる→ロープをまっすぐ張ってそれに沿って椅子を微調整し綺麗に並べる→
→セロテープで椅子の番号の紙を貼る→社員がもめて椅子の配置が変更→やり直す
といった感じだ。私は、率先して動きまくりその結果、社員から図面を授かり重要な役(?)を担った。
ま、こうやって椅子を並べ終わったら午前の部は終わりで昼食休憩なんだけど、椅子並べって意外と大変だった。
微調整しては、変更、変更で。どーせ、客がエキサイトしてすぐぐちゃぐちゃなるのにね。レザーフェイスが客席荒らしたり。ま、レザーは新日関係ないね。
ロープを張ってまっすぐになるよう調整したり、結構細かい事してるんやなって、初めて知りました。

4.リングの作り方

そう、我々が椅子を並べるのと並行して、リング屋さんはリングを作っているのであった。
私は、密かにリング屋の動きを観察し、リングの構造を頭にインプットしていた。
手順は、
まず木の板を柱を立てる下に敷く→その上に柱を立てる。柱はコーナーポストを合わせて9本ある。→それぞれの柱に梁を掛け固定する
→上に長い木の板を並べて敷く→その上にマット(?)らしきものを敷く。2重構造。堅さを知りたいがわからない。けど見た目は結構堅そうだったなー。
→表面のブルーのシートを敷く→ロープをつける。
てな感じだろうか。私は、あまり見る機会がないと思いこっそりケータイのカメラで撮影しておいた。(上の写真↑)
リング乗ってみてー。これはプロレスファン皆が感じる願望であろう。私は、今すぐ花道を突っ走りコーナーポストを駆け登り、タイガーの様に人差し指で天を指しながらリングイン…したいな~。って願望を押し殺した。

5.休憩

昼は弁当が支給された。しかしそれだけで試合終了まで持たないと思った私は売店でカールを購入し食した。

6.運命の役割任命

そして、昼休憩1時間の後、試合中の仕事についての講習があった。
それは、花道で選手を触ろうと押してくる客を抑えるという仕事についてであった。
社員の話によると岡山の客は特に激しいらしく気合い入れていかないとヤバイとのこと。
今まで押す側であった私にはよく分かったが、それはそれは激しいこと、バイトと客が喧嘩になるってのも何回か見たものだ。押せや押せやのお祭り騒ぎだ。
試合中は花道でしゃがんでおき、試合が終わりそうになったら押さえ込みポジションに付くとのこと
そこで社員から意味深発言
**「試合が終わりそうってのは、何となく分かるから」「何でか知らんが、分かるから。」
**ミスター高橋の本を読んでいた私には、複雑な気分であった。
そしてその抑える仕事をするのは、男子20人とのこと。
激しい仕事だが、もちろんやりたい。だって、バイトしながら試合が観られるんだから。それに選手ともかなり接近できる。さらに、その日はテレビも来ていたのであわよくばテレビ出演?
男は25人くらいだったので多分それをすることになると思った。比較的がたいのデカイ方だった私は、なおさら選ばれる自信があった。
しかし…社員は、私をスルーして20人を選出してしまった……。
あ、ああ。ポジションが悪かった…!もう少し社員の近くにたっていれば選ばれたのに!
そ、そして私に任命された仕事とは……「モギリ」。そう、それは
会場入り口に立ちチケットをちぎる
という最も恐れられている任務である。
開場と同時に任務は開始され、試合が始まっても外で遅れてくる人のチケットをちぎりつづける。
私の最も恐れていた事が現実となった。…私は絶望の淵に立たされた。

7.モギリ魂

その後、1時間余りの休憩があったが、私は「モギリ」という任務に絶望し呆然としていた。選手バスが到着し我々の目の前をレスラー通過して行くがいまいち乗れない。
そんな私の気分を察してか(?)社員が言ってきた**「モギリは会場の”顔”だからね。おっきな声で挨拶して、お客さんを迎えてね」**
そ、そうかモギリは会場の顔。一番最初に客を迎えるモギリに大会の成功掛かっている、といっても過言ではない。そのように私には聞こえた。
私は段々この「モギリ」という任務を授かったことを光栄に感じてきた。「よっしゃぁぁ、もぎってもぎってもぎりまくってやるぜー!」

8.新日、燃える商魂

会場を待ってる間、私は偶然新たな任務を受けた。それは余った大会記念ポスターを開場待ちしてる客に売りさばいてこいとの、任務であった。
500円。「売れそうなものは何でも売って、少しでも金にする。」新日の商魂を見た気がした。おいおい、そこらの電柱に貼ってあるようなポスター500円も出して買うか?
と思ったが、面白そうだったので私は喜んでその任務を承諾した。
いざ、外に出て声を張り上げる。サーッ、と引く客たち。私はこの任務遂行の難しさを感じる。
売れないので、挙げ句の果てに警備員の兄ちゃんにまで売ろうとする。すると、買ってはくれないがメガホンを貸してくれた。
おー、これは使える。しかし私は使い方がわからず間違えてサイレンを鳴らしてしまった。
ま、そんなこんなでもポツポツ、買ってくれる変わり者が来てくれて。ポスターは残り1枚になったが、そこでタイムアップ。休憩終了。
あと1枚売りたかったなー!私にも新日の商魂が乗り移っていた…。

9.開場

さあ、開場!任務開始!社員に気合いが入る!私にも気合いが入る!私は声を張り上げて「いらっしゃいませ!」「ありがとうございまーす!」と吠え続けた。
後ろでグッズを売っている社員のテンションが高い!「猪木!猪木!猪木!のTシャツ!!」「迷わず買えよ!買えばわかるさ!」ある社員は、遂には**
長机の上に上がり仁王立ち**、闘魂タオル完売を成し遂げた。
それに呼応し我々のテンションも高まる。「へい、らっしゃい!」私はモギリまくった…。

10.試合開始

客足が減りかけてきた頃、会場の方から例の新日のオープニングの曲と、手拍子が聞こえる…。
ハイテンションでモギリという任務を遂行していた私であったが、除除にそれが崩れる。
試合が始まり、選手のテーマ曲、リングに叩き付けられる「ドタン、バタン」という音、観客のざわめきと拍手。
ああああ、俺は何をしているんだ。すぐそのドアの向こうでは”プロレス”が行われているのだ。
客のチケットなんぞちぎっている場合か?苦しい、苦しすぎる!ファンにとっては生き地獄。
私は、音声だけで試合の展開を頭の中でシュミレーションすることにした…。

11.モギリ続ける

ここでモギリ中のいろんな出来事。
①隣のバイト君が社員から「輪ゴム探してきて」との任務を受ける。しかし、そのバイト君は輪ゴムのありかを知らず、困惑している様子。
そこで私は「あ、僕行って来ますわ」といって任務を代わりに遂行することを申し出た。
しかし、実は私も輪ゴムのありかなど知っているわけではない。なぜ、こう申し出たかというと…選手控え室の前にガムテープとか紐とかがまとめてある袋が確かあった→
そこに、輪ゴムはいかにもありそうなので探しに行く→**
控え室周辺の選手を見られる**。といった魂胆があったからだ。
案の定いました。入場待ちする、ブルー・ウルフと保永レフリーが。
二人を横目に私は輪ゴムを探した。偶然、バラバラと輪ゴムがいくつかあったので、私はかき集めてそれを社員に持って行ったのであった。

②ある時、会場の外に出る客の荷物を預かることになった。すると、その客が戻って来たとき、「礼にとっとけ」ということか、フランクフルトをくれた。
私は今すぐ食いたかった。しかし、バイト中。働く社員を尻目にフランク食うとは…ちょっとできなかった。
結局、その後呼び出されフランクは置いたまま去ったのだが。あとで聞いた話によるとそのフランクは捨てられたらしい。
もー、もったいなーい。

③ある時、もぎってる私を社員が外に呼んだ。なんだ?やっとモギリ終了か?と、私は期待に胸を膨らませた。
そして、私に任命された新しい任務は……広報車のステッカー剥がし、であった…。プロレスをしてる横で、こ、こんな地味な仕事…。爪がぼろぼろになるのを、こらえて私はステッカーを剥がした。しかし、そのとき気になったのが、会場に救急車が来ていたこと。あとで聞いたところによると、タイガーマスクが空中殺法に失敗して、怪我をしたとのことであった。

12.そして遂に…

客足も収まりモギリも暇になってきたところ、遂に来た!場内警備のお誘いが!社員は強引に我々を会場内にいざなった。
私は指定された花道に腰掛けた。おおー、よく見えるで、試合が。そのときは6人タッグをやっていた。棚橋のムーンサルトアタックみたいなのには驚いて、バイト中というのに思わず「おぉー!」って声が出てしまった。
試合は健想がデバインにやられて終わり。そして、選手退場!初仕事だ!
客の圧力は想像以上であった。慣れない私は見る見るうちに後ろに押されていった。なめていた。こんなにハードワークだとは…
働きの悪かった私は、ブラックキャットに怒られた。「こら。しっかり押せ」と、背中を叩かれた。
おー、ブラックキャットに怒られたぜー。ある意味貴重な経験。
しかし、この押し方にはコツがあるようだ。
もっと、腰低くした方がいいで。」前にいた客が教えてくれた。
おー、確かに越し低く押した方が安定する。
そしてセミファイナルを終えメインだ。私のいる外人側花道からは蝶野が出てくる。客の興奮度は最高潮!
おおー、すげー圧力だ。おい、蝶野!早くリングに上がってくれ。もう耐えれんぞー!
初め、レスラーを間近で見れてラッキーとか考えてたが、実際そんな余裕はなかった。早く、レスラーに過ぎ去ってほしい一心だった。
特にメインの時の圧力は凄かった。何カ所か
柵が壊れてしまっていた
。さすが、たち悪いと言われる岡山の客。

13.後片づけ

メインが終わったらすぐに後片づけ。速攻、椅子を片づける。
今回初めて知ったが、試合後の会場の汚いこと。空き缶や、食べ物かす。中身の残ったコーヒーがこぼれていたり。
それはひどいものだ。それを、しっかりほうきではいて、雑巾で拭いて…体育館のおっさんがうるさいんやなー。社員曰くここの体育館は、特にうるさいとのこと。
そして、私が控え室の雑巾掛けをしていたときのこと。そこは選手によって水浸しになっていた。一緒に掃除していた社員が一言
常識のないやつばっかりだな!」
「え、ここってレスラーの…」っと私が聞き返すと「そうそう、レスラー…」フロント対レスラーの対立の縮図を見た気がした(?)。

14.感動の解散

そして、すべて掃除も終わり、最後に全員集合。今日しきっていた社員が閉める。

今日は一日お疲れさまでした。今日の、経験を忘れずに、どうか何かこれからの生活に役立てて下さい。今日は、ほんとにお疲れさまでした!」
おぉー、感動のフィナーレ。いや、ほんと長い一日だった。プロレスの試合を作るには、こんなにいろいろな裏があったは。
単なる一人のバイトの私であったが、何か大きな達成感を感じていた。給料の8000円を社員が一人一人握手をしながら手渡す。しかし、私は8000円という給料以外に、もっと素晴らしい何かを得たような気がした。朝から夜までプロレス作りに携わることができて、ほんとに充実した一日であった。
新日サイコー!!社員もレスラーもみんなサイコーだ!